電力技術懇談会の井上俊雄でございます
本懇談会は早稲田大学理工学部の故田村康男教授のご提唱により「産学協同の場を提供すること」を目的に1994年に発足し、以来、尾出和也、秋月影雄、種市健、横山隆一の歴代会長のもとで、その規模と活動を拡大させて戴くことが出来まして、今日に至っております。
本懇談会の活動は電力技術分野を対象とし、
を支援する活動を実施することを主眼としています。
具体的な活動としては、本懇談会の会員の皆様を対象とし、国内外の最先端の専門家をご招待して時宜を得た各種講演会を開催し、毎回好評を戴いております。また、隣国韓国の大学、電力関係者と連携して、概ね隔年毎に日韓シンポジウムを開催し、両国間の産学の人的交流・技術交流を図っております。さらに、早稲田大学理工学術院総合研究所および同大環境総合研究センターへのプロジェクト研究委託を通じて大学研究者と産業界実務者の協同研究を実施し、毎年3月に報告会を開催しております。同研究に参加した優秀な学生が電力技術分野に就職するという大変嬉しい状況も得られています。
さて、ご承知の通り、電気事業を取巻く環境は、電力自由化ならびに地球温暖化対策によって大きく変化しています。前者については、電気事業への競争原理の導入のため、1995年から発電部門の競争原理の導入、小売部門の自由化範囲を順次拡大、送電部門の公平性確保などの制度改革が実施されてきました。また、2015年からは広域系統運用の拡大、小売および発電の全面自由化、送配電部門の中立性の一層の確保が電力システム改革で進められ、2020年の発送電分離が改革の区切りと言えます。一方、後者については、2003年からのRPS制度などの導入を経て、2012年には固定価格買取制度(FIT)の導入によって太陽光発電や風力発電を主体とした再生可能エネルギーの導入が拡大しています。
このように、発送電分離と再生可能エネルギー導入拡大の両方を実現する新しい供給体制に向けて、電気事業は大きな変革の時代に入っています。また、その変革の中ではVPPや大型蓄電池導入、そしてIoTなどのデジタル化やAIといった新たな技術の積極的な導入により電気事業の業務自体も大きく変わりつつあります。
このような変革の時代にあっても、国民の為に電力の安定供給を確保することが電気事業の原点であることには何らの変わりはありません。これからの電気事業では、これらの新しい環境の下で、系統運用者である送配電事業者、系統利用者である発電事業者、小売事業者などが相互に協力して、より一層、電力の安定供給に取組んでいくことが求められます。
その取組を推進するための重要なポイントの一つとして、電力の安定供給に必要な需給運用面や系統運用面の技術的な基礎、火力発電所の発電機が再生可能エネルギーのインバータ電源に置き換わった場合の系統の電圧、周波数、安定度への基本的な影響などに関して、系統運用者と系統利用者とで共通の認識を醸成することも必要であると考えられます。その醸成の支援においても本懇談会が貢献できるような工夫を検討したいと考えております。
今後とも会員の皆様はじめ関係各位におかれましては倍旧のご支援を賜れますようお願い申し上げます。
電力技術懇談会会長 井上 俊雄((一財)電力中央研究所)